破壊、エネルギーから解毒へ

理化学研究所が、放射性物質である核のゴミを有用な貴金属に変える技術開発に着手すると発表した。放射線量の半減期が650万年のパラジウム107に重陽子ビームを当てて無害なパラジウム106に変えてみせようと言っている。パラジウム106は、宝飾品や歯科治療、車の排ガス浄化用触媒などに使われているから、願ったり叶ったりの技術開発であることは間違いない。実験は、内閣府が主導する革新的研究開発推進プログラムImPACTの一環。パラジウムの核変換実験は世界初だから、まさにimpactなニュースだ。核のゴミは厄介だ。放射線が人体に悪影響を与えるだけではない。半減期が長過ぎる。漏洩すれば所構わず悪さをまき散らす。世界中が核のゴミを持て余しているのが現状だ。だから、放射線量を元から絶てれば理想的な処理法と言える。でも、その技術が出来ても核のゴミの一部だから、核のゴミ問題の解決には繋がらないのでは、と言う人は必ずいるものだ。だが最初から完璧に解決する技術などある訳が無い。ImPACTは、核燃料に使うウラン235が核分裂した後に残る物質であるジルコニウム93やセシウム135、セレン79なども研究の対象にしている。大事なことは、今まで人類が作り出してきた放射性物質を、如何に減らすかにある。理研の研究は、まさに「現代の錬金術」と言える。原子力研究が、破壊、エネルギーから解毒へと転換する瞬間と言えそうだ。