TPPの価値

衆院TPP特別委員会が空転している。西川委員長のTPP交渉内幕の著書、交渉過程を隠す黒塗り文書、交渉を担当した甘利前大臣の国会不在等で議論が始まらない。衆院補選、夏の参院選を意識し党利党略に走り、与党からは先送り論まで飛び出している。一体何の為のTPP交渉だったのだろうかと思う。アベノミクスと騒いではみたものの、肝心の成長戦略が描けず、今は息切れの状態にある。成長戦略とは岩盤規制を壊すことでもあるから、初めから官僚の強力な抵抗に遭い極めて困難なことは分かっていた。だからこそ、外部の力を利用して規制緩和を図るしか道は残されていない。それがTPPだと理解していた。TPPの実態が分からないので、成立後どっちに転ぶか分からないが、立ち止まるよりも進んだ方が閉塞感から抜け出すことが出来る。ところが、米国では、次期大統領候補全員がTPPに反対している。トランプは「バカげた協定だ」と切って捨てた。自由主義者のクルーズまでも反対派に転向した。社会主義者のサンダースは「破壊的だ」と激しく批判し、クリントンも「今のTPP法案には反対」と表明している。今やTPPが成立する見込みは皆無に等しい。でも、日本にとっては、たとえ結果として不成立になっても、TPP成立を前提にして議論が進めば規制緩和が図られる効果はある。いわば、他人の褌で相撲を取るようなものだが、今はその褌すらも締められない政治家たちが右往左往している。嘆かわしい限りだと思う。