化学物質とガン

福井市の染料工場で従業員6人が相次いで膀胱ガンを発症した。厚生労働省は作業員が手袋をせずに作業したため化学物質「オルト-トルイジン」が皮膚から体内に吸収された可能性が高いとの調査結果を発表した。不十分な防護措置がガン発症に繋がったとの見解だ。昔から多くの化学物質がガンを発症させている。2年前には印刷会社の従業員の胆管ガン発症は1、2ジクロロプロパンと特定された。自分が学んだ大学院では1、2ジクロロエタンの分子構造の研究だったから、炭素がもし一つ多かったらとヒヤリとした。化学物質は怖い。でも昔は誰でも平気で扱っていた。今から思い起こすと、発がん性物質との長期間的な出会いは大学の卒論研究。ベンゼン内での物質の誘電率を研究していた。毎日ベンゼンを精留精製して使う日々が続いた。化学実験では、加熱時にアスベストを使うのが常識だった。いつも素手でアスベストを装置に巻き付け保温をしたものだ。会社勤めになってからも、IARC発がん性リスクのグループ1だけでも、アセトン、ヒ素、ベリリウム、カドミウム化合物、六価クロム化合物、1、2-ジクロロプロパン、酸化エチレン、ホルムアルデヒド、ニッケル化合物、ポリ塩化ビフェニル、放射線物質、トリクロロエチレン等々を扱ってきた。10年程前にアスベスト被害が問題になり、会社から健康被害の調査が来たことがある。自分は化学物質の臭いに過敏でクシャミが連発し止まらなくなるのだが、幸いそれ以上の健康被害はない。ないと答えた。そして今も無い。自分は偶々運が良かっただけなのかもしれない。極端に常時発がん物質に曝される場合は例外として、多くの人は短期間曝されても健康被害には至らないのだろう。問題は、過敏な人だ。遺伝子解析サービスが汎用化すれば飛躍的に被害が少なるなるのかもしれない。