風化する原発事故

九州電力は川内原発を昨年再稼働させた。但し、原子力規制委員会は今年の3月末までに免震重要棟を建設することを再稼働の前提条件にしていた。ところが九州電力は今になってその建設を取り止めると言い出した。現在原子力規制委員会と九州電力で揉めているが、再稼働した原発を止める気配はない。免震重要棟の重要性は、福島原発事故で証明されている。もしあの時免震重要棟が無かったらフクシマ50は高い放射線を受け現場に踏みとどまれずに、東日本は崩壊していたかもしれない。いざと言う時の最後の望みの綱なのだ。それを九州電力は、あっさりと不要と言って約束を反古にした。一方、原子力規制委員会は関西電力の高浜1、2号機の審査に合格を出した。高浜1、2号機はともに40年を超えている。原発事故以降の法改正で、原発の寿命は原則40年とされている。早くも原発運転の「40年ルール」は、骨抜きにされてしまった。そもそも原子力規制委員会の合否審査自体が妙だ。審査の時点で、審査基準を満たしていなくても、電力会社が今後満たすつもりと言えば、満たしたと判定してしまう。本来審査基準を満たした時点で審査し、合否を判定すべきものだ。審査に合格して再稼働した時から、満たすまでの期間に災害が発生する事態は全く考慮されていない。原子力規制委員会の審査は、まるで小学生の学芸会と同じだ。「やったつもり」が許される。田舎芝居とも言えそうだ。東京電力では、5年も経った今になって、メルトダウンの判定基準を決めたマニュアルがあったと言い出した。誰も気付かなかったと言っているが、隠蔽したのは明らかだ。事故直後にメルトダウンと発表すれば大パニックを引き起こしていたに違いない。それを今になって発表したということは、それだけ原発事故が風化してしまった証とも言える。原子力規制委員会も電力会社も、そして国民も既に原発事故の恐ろしさを忘れてしまったようだ。