臭いの功用

子供の頃の祭りの夜店の照明源はアセチレンガスだった。あの臭いを嗅ぐと今でも昔の祭りのイメージが蘇えって来る。自分は長年化学を生業にしていたので、臭いだけで化学物質名を識別出来ることもある。新聞記事によると化学物質の臭いで体の病変を察知する研究が進んでいるようだ。息から体の異変を嗅ぎ取ることが可能だという。呼気には体内で起きる様々な反応によって生じる物質が含まれている。その物質を分析すればどのような病気かを推定出来るとのこと。例えば、糖尿病は脂肪酸を代謝してエネルギーを得るので、その際生成されるアセトンが血中を通して肺に運ばれ吐く息に混ざるという。食道がんはアセトアルデヒド、気管支ぜんそくは一酸化窒素、歯槽膿漏は硫化水素、肝硬変はアンモニアという具合らしい。呼気を採取し質量分析器にかければ物質を特定出来る。しかし、今は精度が低いので高める必要はあるようだ。自分の記憶が確かであれば、犬は癌の臭いを識別出来たはずだ。臭いの威力は素晴らしい。「病は気から」という言葉があるが「病は気体から」となる日もそう遠くはないかもしれない。