薄っぺらなノーベル賞経済学者

日経朝刊の「経団連が国に異例の回答」という記事に目が留まった。政府が開いた官民対話で、安倍首相は経団連に強く設備投資を迫り、榊原経団連会長は設備投資を3年間で10兆円増やすと回答した。要求する首相も酷いが、回答した榊原の無責任さも目に余るものがある。元来経済活動に官が民に介入すべきではない。官民対話が歪み過ぎて、まさにここに極まれりという状況だ。では何故首相は強引に設備投資を求めるのだろうか。答えは簡単だ。海外ではアベノミクスが既に失敗に終わったと評価されているからだ。GDPが2期連続マイナスになった。政府は「景気回復の動きが足踏みを続けている」と言っているが、少なくとも欧米の経済学界では「景気が下降局面に入った」と判断している。アベノミクスにとっては更なる究極のダメ出しがある。アベノミクスの理論的基礎を提供したリフレ派のノーベル賞経済学者ポール・クルーグマンが、その自説の誤りを認めて撤回してしまったのだ。日本は生産人口が減るから、お札をいくら刷っても日本経済は回復しないと言い出した。だが日本の少子化は世界中の誰でも知っている。今更少子化という前提が抜けていたからなどという言い訳は通用するはずがない。クルーグマン説の受け売りの浜田参与も「世界が日本経済をうらやむ日:浜田宏一:幻冬舎」ではアベノミクスを称賛しているが少子化には一切触れていない。浜田もハシゴを外された一人に違いない。一方既に2010年刊行の「デフレの正体:藻谷浩介:角川oneテーマ21」で、デフレは少子化によるものと発表されている。当時この本は話題に上ったが、少子化になればデフレになるのは当たり前だと極めて評判が悪かった。それほど当たり前の前提が抜けていたのがアベノミクスの正体のようだ。早急に軟着陸点を見つける必要がありそうだ。