猫だましの是非

もう永いこと大相撲中継を見ることはなくなったが、ニュースで面白いシーンを見た。横綱白鵬が関脇栃煌山に対して猫だましを2回も食らわせ勝利した。猫だましとは、相撲の戦術の一つ。相手力士の目の前でパチンと両手を合わせて、相手の目を瞑らせて勝負を有利に進めるための奇襲作戦だ。普通ははるかに強い相手に対する一発勝負で、嘗ては小兵の舞の海が猫だましで大男を手玉に取り相撲人気を盛り上げたものだ。だが横綱が猫だましをしたのは見たこともない。まさか白鵬がするとは思わなかった。でも、ニュースで見るとユーモラスだ。栃煌山は目を瞑り完全に術中に嵌っていた。勝ち名乗りを受けた後、白鵬は少しバツの悪そうな顔をした。北の湖理事長は「横綱にあるまじき」と苦言を呈した。しかしながら、猫だましは横綱にとって禁じ手なのだろうか。白鵬は体格にも恵まれ、それを生かして幕内優勝35回の歴代1位の大横綱だが、得意技は寄りと上手投げ。安定はしているが得意技の少なさが欠点だ。今場所の猫だましを契機に多様な技を身に付けることに挑戦してみると良いと思う。舞の海は「技のデパート」との異名をとったが、白鵬が「技の総合商社」になれば、大相撲は断然面白くなるし、白鵬自身も一皮剥けて更に成長するはずだ。今のモヤモヤも吹き飛ぶはずだ。猫だましは、白鵬に勝てば良いというものではないことを教えたが、反面技の広がる世界に導く起爆剤になるかもしれない。もっとも、白鵬に更に上を目指す気迫があればの話だが。