女性活躍担当相という罠

夫婦別姓を認めない民法の規定が憲法違反かを問う訴訟が今日結審した。最高裁が年内にも初の憲法判断を下すことになる。民法750条は「夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を称する」と規定している。この規定は明治時代から変わず続いている。原告は「姓の変更を強制されない権利や婚姻の自由を侵害している」と主張し、国側は「どちらの姓を名乗るかは夫婦の選択に委ねられているので違憲ではない」と反論している。そもそも原告が民法750条を違憲として裁判に訴えた理由は、政治に期待しても埒があかないと諦めたからという。世界的に見ても、夫婦別姓を認めない法律があるのは日本だけだ。国連の女性差別撤廃委員会も「この規定が女性差別に当たる」として繰り返し日本に廃止を勧告している。だが、日本の政治は動かない。昨年9月に第2次安倍内閣が発足し、その時初めて「女性活躍担当相」が創設された。当時首相は「全ての女性がその生き方に自信と誇りを持ち、活躍できる社会をつくるため」のものと説明している。ところが内容は「女性を働かせる」ことしか考えていないのが現状だ。初代の有村女性活躍担当相などは、夫婦別姓に何と反対の立場をとっていた。推して知るべしだ。政府には女性の人権的地位向上など眼中にはない。開いた口が塞がらない。今後「女性活躍担当相」が女性の人権を増々貶める気配が濃厚だ。