忍法目眩しの術

集団的自衛権の定義や歯止めが曖昧なまま、自民が特別委員会で強行採決を行った。法律は出来てしまえば、その時その時の権力者により拡大解釈が可能だ。安倍首相の想定した範囲が、人が変われば広がる恐れは充分にある。と言うよりは拡大解釈されていくのが当たり前の世界だ。あの戦争に突入した過去の経緯が脳裏に蘇り、戦争に巻き込まれるのではと、国民の誰しもが不安を感じているに違いない。安倍は強行採決後の会見で「国民に理解されていないのでこれから十分に説明する」と述べたが、本末転倒も甚だしい。話がアベコベだ。夕方のニュースは安全保障一色になると思っていたら、安倍はすかさず新国立競技場の見直しも持ち出した。安全保障と競技場を較べると重要度は月とスッポンほどの大きな差があるが、競技場建設費は国民に身近で分かり易い問題だ。安倍にとって競技場問題はまさに安全保障法案の目眩しの道具に違いない。「国民の8割が反対しているので見直す」と言えば、いかにも国民の声を真摯に受け止めているように見える。建設費を削減出来れば成果になる。たとえ現行案のままとなっても「徹底的に見直した」と言い訳が立つ。競技場建設見直し表明は、どっちに転んでも安倍の成果に結びつく。強行採決の非難を和らげるため、このタイミングで競技場問題見直しを言い出すのは極めて姑息だ。明日のテレビの報道番組は新国立競技場見直し一色になりそうだ。