残業代ゼロ法案の行方

政府が「残業代ゼロ」法案を新成長戦略の目玉にしようとしているが、本当に効果はあるのだろうか。現在管理職ではない社員には1日8時間、週40時間という労働時間の規制があり、それを超えると残業が発生する。ところが政府は労働の生産性を上げるため、時間ではなく成果で評価する賃金の仕組みを導入しようとしている。当面の対象者は、年収1千万円以上か、労働組合と本人の同意があることを条件にしている。しかし管理者ではなく1千万円以上の年収がある者は大手商社かトレーダー程度で人数は極めて少ない。また労働組合の同意といっても、大企業の労組は会社の御用組合だから歯止め効果は望めない。中小零細企業には労組の数は少ないのが現状だ。法案が成立すれば、今流行りのブラック企業が労組を作り強引に本人の同意を取るのは目に見えている。以前居酒屋のワタミは現在の労働規制を掻い潜るため、店長を形式上の管理職として残業代を支給せずブラック企業の烙印を押されたことがある。この残業ゼロ法が成立しても、喜ぶのはワタミやすき家などのブラック企業だけだ。一口に規制緩和というと、良い方向に進むように思われるが、残業代ゼロ法は劣悪な労働環境を作り出す悪法になるに違いない。労働生産性を上げる方法は他にある。日本政府には、決定的な視点が欠けているようだ。