災いを転じて福となす

今から30年近く前、製造現場にいた時、不具合品を出荷してしまったため松下電器の査察を受けたことがある。原因を調査した結果、人為的ミスなので包み隠さず査察員に報告した。ところが原因究明が甘過ぎるとの指導を受けた。査察員曰く「人の原因にしていたのでは、人が変わる度に再発する。再発しないための仕組み作りが必要」と。当時の品質管理の考え方としては斬新で衝撃を受けた。その経験以降、人為的ミスを防止するための仕組み作りを信条にして徹底した。まさに災いを転じて福となすだ。だから今でもその査察員には感謝している。こんな昔話を思い出させる出来事があった。韓国の旅客船転覆事故や地下鉄の衝突事故への対応だ。韓国ではまず人的責任を追及する。原因追究が二の次となり、再発防止対策までは及びそうもない。そのうちまた同じような事故が起き、誰かが処分されることになる。一方日本では再発防止の仕組み作りが徹底している。フォローが上手いのだ。同じ過ちを犯さない仕組み作りこそ、言葉を言い換えれば「文化の熟成度」と言える。韓国の文化は、見た目は同じだが、実態は日本に較べ30年は遅れているように見える。朴大統領は遺族に対し「4月16日を境に韓国の安全システムを一変させる」と断言した。有言実行出来れば韓国の文化レベルはワンステップ上がるはずだ。過去を追及しても何も生まれない。将来に向け文化を育成することこそ指導者の取るべき道であると思う。