美術品の思召す先

絵画のことを知っているかと聞かれると、実のところ、まあソコソコと言うよりか、コソコソと言うか、あまり知りませんとしか答えようがない。聞くところによるとオランダのクンストハル・ロッテルダム美術館で昨年ピカソなどの名画が盗まれたらしい。犯人と思しき人の母親は、証拠隠滅のため地中に隠し、その後掘り起し燃やしたとの報道。盗まれた絵画は、ピカソの「アルルカンの顔」や、モネやマティスなど時価総額は100億円以上とみられている。もし本当の話であれば、文化財産の消失はまことに痛ましい事だ。だがその母親の行為はそれ以上に痛ましいことかもしれないとも思う。この母親は、窃盗という子供の罪は充分理解していたに違いない。もしかしたら子供の罪を隠すために、価値の分からない絵画を燃やしただけかもしれない。もしそうであれば母親の罪はどれ程のものだろうかと思う。要はその母親が、その価値を知っていたか否かが重要で、告白次第で、天国か地獄へ行くことになるのだろう。この事件で、嘗て日本の製紙会社の社長が「自分が死んだらこの絵を一緒に燃やしてくれ」と言った話を思い出した。この社長は間違いなく地獄へ行ってしまったのだろう、さてこの母親はどちらへ行くのだろうか。