大作家のペンネーム

今年4月に出版された探偵小説「The Cuckoo’s Calling:ロバート・ガルブレイス」は、僅か1500冊しか売れていなかったが、突如アマゾン英の書籍1位に駆け上ったとのこと。新人作家のデビュー作としては完成度が高いので調べた結果、ハリー・ポッターの作者J・K・ローリングがガルブレイスというペンネームで書いていたことが判明したからだ。ローリングは、大規模な宣伝や期待を背負わずに解放的な気分で執筆出来たことを喜んでいるという。ハリポタ作家という大看板を背負っていると、なかなかそこから抜け出せない見えない縛りがあるのだろう。だが名前を変えれば新たな人格や思想が生まれ、その名前が新たな発想で新たな文章を紡ぎ出し新たな世界を創り出す。たとえペンネームといえども、人格や思想が存在する証だ。大作家が異なるペンネームを使い執筆することは良い事だと思う。主題の絞り方、文章、構成等の技術は完成領域にある。その高い技術を駆使して新しい上質な小説世界を産み出してくれる。素晴らしいことだと思う。惜しむらくは作家名の発覚が早過ぎた。もっと遅ければ、驚きと感嘆と称賛が倍加していたであろうに。