赤い糸の綱渡り

20日から22日まで滋賀と京都へ紅葉狩りに行き、紅葉には大いに感動させられたが、まずブログに書きたいことは意外にも紅葉ではなかった。20日は自分の父の出身地でもある長浜と彦根に立ち寄った。長浜の黒壁はやや煤けてしまっていたが、井伊直弼の居城である彦根市には昔の力を留める勢いを感じた。彦根城の天守は国宝に指定された四城の一つに数えられているばかりではなく、まち全体が昔の面影を留めている。城は勿論のこと、武士の町、町人職人の町、足軽の町そして農民と、今でも当時のままのようだ。彦根駅から彦根城に登って玄宮園に下り、厩の前を抜けて昔の街並みの夢京橋キャッスルロードに出た。何とも見事な景観だ。井伊直弼の偉大さを心底味わう事が出来た。そして今回は紅葉を追う旅でもあり22日は京都に移った。北山の金福寺は芭蕉ゆかりの寺で蕪村の墓もあり俳句の聖地でもある。小さな庭ではあるが綺麗な紅葉だった。ところが北山の曼殊院に行きがてらの一つと思っていた金福寺がとんでもない寺であった。意外にも舟橋聖一の「花の生涯」や諸田玲子の「奸婦にあらず」で有名なヒロインである村山たか女が、尼僧となり晩年を過ごした寺でもあることが分かった。たか女は直弼の若い時の愛人で、大老の時はスパイとして活躍し、桜田門の変で直弼が亡くなった後は金福寺で余生を送ったとのこと。今回の旅は直弼とたか女の赤い糸の上を、直弼の強い意志によりまるで自分が綱渡りのように乗って渡らされていたのかもしれない。紅葉ではなく心が高揚した。