ラムサール条約と自然保護

国際的に貴重な湿地を保護することを定めたラムサール条約に、栃木県などに広がる渡良瀬遊水地や熊本県の荒尾干潟など9か所が正式に登録され、日本の登録地は46か所になった。登録後は国が湿地の環境に変化がないかを6年ごとに条約事務局に報告することが求められるが、登録によって観光の振興や地域の活性化につながることも期待されている。ラムサール条約とは、水鳥を食物連鎖の頂点とする湿地の生態系を守る目的で制定されたが、ラムサール条約に登録したために生態系が壊された登録地も存在する。その代表例が1993年に登録された千葉県の谷津干潟だ。ラムサール条約登録にあたり自然観察センターや駐車場を建設するため、野原が潰され蟹の生息地が埋め立てられたため、水鳥たちの貴重な餌場が消失し渡り鳥の渡来が激減してしまった。1976年には1500羽を数えたシロチドリは1996年では150羽ほどに、サギ類など他の鳥類についても数十分の一へと減少した記録がある。まさに本末転倒の対応であった。新たに登録された登録地が谷津干潟の轍を踏まないよう願いたいものだ。