拙速か巧遅か原発再稼働新基準

原発再稼働を判断する新基準検討の指示を受けた保安院がたった2日で作成した新基準を、野田らは4閣僚会議で大した検討もなく決定した。内容は今までの焼き直しで何ら新しいものはない。焼き直し案の、基準1は全電源喪失防止対策済、基準2はストレステストOK、基準3は免震重要棟等の計画の有無。これでは「巧遅」にもならない。新聞では「たった2日で作成を」を「拙速」といっているが、内容は拙速でもなく反対の巧遅でもなく中途半端。拙速はいつも必ず悪いという訳ではない。緊急時は拙速が極めて重要になる。そもそも事故が起きてからの安全対策の大きさ深さは、事故が起きてからの時間に比例するのが常識だ。今回の新基準が原発事故後の3~6か月後に策定されていたならば拙速ではあるが、タイムリーで適切な措置であり原発への不安を若干でも和らげたに違いない。しかし最早1年を経過している。今更こんな巧遅にもならない半端な基準が認められる訳がない。1年経過後の基準案であれば、事故防止のための防波堤の建設は着工済み、万一事故が発生した場合の免震棟建設着工済やベント基準や放射能汚染拡散防止対策案が示されていなければならないはずだ。野田らがやるべきことは、手前味噌で新基準を作り手前勝手に政治判断することではない。まず1年経過したことを十分認識し、事故防止だけでなく事故発生後の対策も含めた安全基準案を作成し一定期間国民に提示し議論を重ねた後に、国民の意見と日本の経済とを考慮して政治判断すべきものだ。緊急時の報告や応急安全対策は「拙速」でも行うことが重要だが菅は理解していなかった。菅を引き継いだ野田も1年遅れを認識出来ず「巧遅」にもならない安全基準を決定してしまった。政治家にとって時間軸の認識の欠如は命取りになることが証明されようとしている。