野口英世vs二宮尊徳

ミレニアムを記念し小渕首相の発案で2000年に生まれた2千円札が9年連続で製造枚数ゼロとのこと。表は守礼門、裏は源氏物語絵巻の2千円札は使い勝手が悪いので当然だと思う。お釣りで貰ったら直ぐ使ってしまうのが習慣になっている。お札と言えば、千円札の野口英世には相当違和感を覚える。自分が子供の頃に尊敬すべき人と言われていたのは野口英世と二宮尊徳だった。ところが「生物と無生物のあいだ:福岡伸一:講談社現代新書」を読んで驚いた。野口英世はノーベル賞に3回も候補になった人物ではあるが、科学上の偉人とはかけ離れているらしい。本書によると、野口は梅毒、ポリオ、狂犬病、トラコーマ、黄熱病について顕微鏡観察による多くの論文を発表したが、そのほとんどは当時では顕微鏡観察では不可能なウイルスによるものであり、今では研究成果としては世界的に認められていないものとのこと。事の真贋は分からないが限りなくニセ科学者に近いと思われる。しかしどういう訳か千円札の肖像となり今も生きている。一方かつて1円札だった二宮尊徳は可哀そうだ。昔は小学校の校庭の片隅には必ずあった。子供心に金次郎の像を見ながら勉強しなくては、と思ったものだ。ところが最近の先生方は、金次郎は「ながら族」の典型で、かつ道路交通上危険という考えで、金次郎像の撤去が進んでいるらしい。昔の教えを教えとして斟酌することも出来ずに、現代風に裁いてしまう教育界の軽薄さは如何なものかと思う。昔は正しいと思われても間違いが分かればそれを正すのが科学だと思う。正しいか間違いかは分からないが、取りあえず風潮には乗っておこう、というのが政治教育の世界らしい。残念。