柿の一生

我が家の庭には、松、梅、柿、柚子、その他にも二三の木がある。今は晩秋。柿の木の情景に風情を感じる。今年の柿の実の収穫も終わった。植木屋が刈り込んだ枝には紅葉した柿の葉が20枚程度ぶら下がり、風に吹かれている。その殆どは茶色に枯れているが、鮮やかな茜色に染まりホクロのような斑点のある葉が数枚残っている。その色彩はまるで実篤や鶴太郎の絵そのものだ。その色彩が、柿の葉はこうして枯れていくのだとシミジミと教えてくれているように感じさせる。やがて柿の木は葉を落とし、枝だけで寒風に耐えることになる。そして、春が来る。春を真っ先に迎えるのが柿の木だ。誰よりも早く枝先に緑を付ける。それを見て春が来たと思う。その緑は日毎に膨らみ、手のひらを開くように太陽を迎える。こうなると成長は早い。瞬く間に葉は大きくなり生い茂る。白い花が咲き散っていく。そして知らない間に小さな青い実を付ける。実は日毎に生長する。そして、ある時、黄色に変色し始める。その時、初めて今年も沢山実がなったことに気付くのだ。去年は少なかったが、今年は100個以上の実が獲れた。年を取り高所作業は難しくなってきたので高枝鋏で刈り取った。我が家の柿は、殆ど手入れはしていないが、そこそこ堅くて上品に甘くて誠に美味だ。知り合いに少し分け、あとは毎日朝食のデザートになる。何か幸せを感じる。そして、この文章の先頭に戻るのだ。柿の一生も素晴らしいと思う。