理科の授業で硫化水素を発生させる実験中、生徒たちが救急搬送されたり一時入院したりする事故が全国の中学校で発生し続けている。試験管に硫化鉄と塩酸を入れれば硫化水素が発生する。極めて簡単な操作だが、硫化水素は猛毒で危険な実験だ。搬送事故が多発しているというのに、文科省は一向に止める気配は無い。教育関係者や専門家は「身近にある危険を身をもって学ぶため」と口をそろえる。硫黄は単体では無臭で有害性は低いが、硫黄の化合物である硫化水素は強い刺激臭があり、有害性が高い。火山や汚水などからも発生するため、硫化水素中毒による事故が後を絶たない。このため、硫化水素の臭いを体感することが「身近な危険を学ぶ機会になる」という理屈だ。だが、硫化水素は少量でも吸えば嗅覚はまひし、死に至ることもある。止めれば良いものを止めない理由があるようだ。文科省の学習指導要領には、2種類の物質を反応させる化学変化を実験を通して学ぶことが記されている。だが、硫化水素を発生させる実験は例示しておらず、実施は求めていない。でも、複数の教科書には硫化水素の実験について記載されているのが実情だ。教科書検定は文科省の領分だ。結局、文科省が実質的に硫化水素発生実験を強制しているのだ。文科省のダブルスタンダードが無くならなければ、中学生は必ず危険な目に遭うことが続くのだ。
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