トランプ政権の経済政策を支えるブレーンが書いた論文に注目が集まっている。「ミラン論文」と言われて、米政権の関税強化策の下敷きになっているとみられているのだ。論文のタイトルは「世界貿易システムの再構築の手順」。ミラン論文の特徴は、経済政策と安全保障を一体的に捉えた政策運営の必要性を説いている点だ。まず、基軸通貨の役割を果たす米ドルが各国の決済通貨としての需要も強く、構造的にドル高を生じさせてきたと主張。その分輸入価格が割安になって輸入数量が増える一方で輸出数量が減るため、貿易赤字がますます増えていくとするジレンマを説いている。ドル高に伴って貿易上の不利益を被ったことで、米国の製造業や雇用を衰退させたとも訴えている。更に「国家安全保障と貿易を一体化して考えられる」と強調。多くの国が米国による防衛の傘の下で利益を得ているとし、その適正なコストを関税率の引き上げによって求めることには正当性があると主張している。ところが、第一生命経済研究所の熊野氏は「あまり実証的な分析をしておらず、かなり偏っている。論文ではなく、エッセーに近い」とこき下ろす。問題はトランプ政権の支援者であるIT企業や金融部門の高所得者層には言及していないことだ。製造業の衰退とIT企業や金融部門のバランスを図ることは米国内の政治問題だ。製造業の衰退だけを他国の所為にすること自体が間違っている。
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