履修主義 vs 習得主義

財務省の財政制度等審議会が「大学が小学校の算数を教えている」と指摘した。財務省の発言の狙いは「こんなレベルの低い大学には私学助成を見直すべき」という意味が込められている。確かに、大学で義務教育の基礎を教えなくてはならないことは大問題だと思う。しかし、話はそう単純ではない。音楽家でもある伊東乾東大教授が日本の教育を破壊した犯人を指摘している。我が国の教育課程が完全に底の抜けたバケツになっている諸悪の根源は昭和22年教育基本法にあると言う。昭和22年教育基本法はGHQにより制定され、履修主義が徹底された。履修主義では、授業を受けることが進級・卒業の要件で、教室にいさえすれば極論、居眠りしていても単位がつく。どれだけ学んだかの成績は進級の要件にはならないのだ。それに較べ戦前の教育は習得主義だった。習得主義では、一定の教育課程の習得をもって義務教育は終了したとみなすのだ。1947年以降の日本の教育で失われてしまったのは、卒業段階での出口調査、つまり出荷時の品質保証に相当する教育の水準チェックが消失したことによるのだと言う。戦後80年となる今こそ、文科省は日本の教育を抜本的に改正すべき時期を迎えている。