パンツを土に埋めるって

土壌の健康状態を調査する方法は色々ある。ユニークなのが、スイスの農業研究機関アグロスコープとチューリッヒ大学が2021年に共同で実施した「そうだ、パンツを土に埋めよう」だ。1,000枚のパンツを使って土壌の健康状態を調査する実験が、スイス全土で実施されたのだ。目的はスイス国内の土壌にいる微生物の状態を調査することで、狙いは市民の環境保全活動への参加意識を高めること。まず、自宅近くの土地に綿100%のパンツを埋めてもらう。数週間後に掘り出し、どれほど分解されたかを確認する。分解が進んでいるほど土壌の中の微生物が活発な証拠となる。当初は、ハンカチや靴下を使うことを考えていたが、一般の人々に広く参加してもらいたいという思いから「パンツを埋めませんか」という宣伝に切り替えたとのこと。これが当たった。応募は盛況だったとのこと。それ以上に収穫は多かった。全国レベルで土壌調査が出来たこと。参加者が土壌を「生きたシステムであり重要な資源」として捉えるきっかけになったこと。何よりも大きな意義はシチズンサイエンス(市民科学)を実践出来たことだ。科学は専門家のためにだけあるものではない。科学が誰もの身近にあるものであることを気付かせたのだ。これは科学史上における大進歩だと思う。