安価な有機ELテレビ

有機EL材料開発が脚光を浴びている。有機ELテレビは液晶テレビと較べ高画質だ。ディスプレイ自体が発光するため明るさを細かく調整でき、メリハリのある色彩表現が可能で、液晶では表現が難しかった完全な黒色まで表現することも出来るし、斜めから見ても明るさや色味が変わりにくいという特長がある。でも、有機ELテレビの普及は今一だ。問題は、有機EL材料が高コストだからだ。現在の有機ELの発光は、励起1重項から基底状態への蛍光と、励起3重項から基底状態への燐光が使われている。だが、その燐光の効率化を上げるためにIrが使われている。しかし、Irは高価で資源的にも乏しい。これが有機ELテレビが主役となるためのネックになっているのだ。そこで、研究者らは安価な材料で作られる熱活性化遅延蛍光TADFに注目している。TADFは、励起3重項から逆項間交差により励起1重項に遷移したのち、蛍光を発しながら基底状態に落ちるシステムだ。でも、そのメカニズムは良く分かっていない。この度、名古屋大学と九州大学の研究チームが、発光効率を高める新たな量子機構を発見したと発表した。安価な有機ELテレビの上梓は目前に迫っているようだ。