学者ゆえ

物価上昇が続いている。9月の全国消費者物価指数は、前年同月比(生鮮食品を除く)が2.8%。日銀が目標としている2%を19カ月間連続で上回った。それにもかかわらず、日銀は「まだ物価上昇が確実でない」と主張し続けてきた。誰がどう見たっておかしい。いつまで「カラスは白い」と言い続けるのかと思っていた。ところが、植田日銀総裁が国会で物価高への責任を問われ「物価見通しに誤りがあった」とあっさり認めた。あのプライドが高い日銀が誤りを認めるのは異例だ。何かと御託を並べて金融緩和を押し通す黒田と違って、植田は学者だ。学者ゆえ、あからさまな嘘はつけなかったのだろう。しかし、植田は「物価高が家計や企業に大きな負担を強いていることは重々承知しているが、長く続くとは思わない」と極めて呑気だ。これも学者ゆえの発言かもしれない。恐らく植田はトリクルダウンが起きて、賃金が上がり物価高をカバーするとでも思っているのだろう。しかし、今までトリクルダウンなど起きなかった。トリクルダウンが起きないために国民が苦しんでいるのに、トリクルダウンに期待するのは学者ゆえかもしれない。