宇宙望遠鏡「ユークリッド」が

この宇宙で最も多い元素は水素だ。ではこの宇宙で最も多い物質は何だろうか。水素ではない。この宇宙では元素はたったの5%に過ぎない。この宇宙は、68%のダークエネルギーと27%のダークマターで占められているのだ。この2つは、存在することを示す証拠はあるものの、まだ誰も実際に確かめたことはなく、その正体の解明は、物理学と天文学における大きな挑戦となっている。この謎だらけのダークマターやダークエネルギーの性質を明らかにするため、2023年7月欧州宇宙機関が開発した宇宙望遠鏡「ユークリッド」が打ち上げられた。ダークマターもダークエネルギーも、光のような電磁波を出したり吸収したりはしないため、直接観測することはできない。そのためユークリッドも、望遠鏡でダークマターやダークエネルギーを直接観測するわけではない。ユークリッドはまず、史上最大かつ最も正確な宇宙の大規模構造の3D地図を作成する。この地図で、宇宙の歴史の中でどのように膨張してきたのか、その構造がどのように形成されたのかを明らかに出来る。そして銀河や銀河団への影響度合いを推し量ることで、その性質に迫ろうというのがユークリッドの目的なのだ。観測データは欧州だけでなく、米国、カナダ、日本の300以上の研究機関から2000人以上の科学者が参加する「ユークリッド・コンソーシアム」によって分析する体制が組まれている。撮影には6年もかかるという。ダークマターとダークエネルギーが分かると、人類に何をもたらすのだろうか。私たちが何者なのかという根源的な哲学かもしれない。