重さの定義

自分が中・高校生時代の1キログラムの基準は「水温4度のときの1立方デシメートル(1辺が10センチの立方体の容積)の水の重さ」と定義されていた。この定義に従って作られたのがキログラム原器だ。白金90%とイリジウム10%で構成されている。しかしその後、100年間で平均50マイクログラムの重量が増加したことが確認された。たったの0.00005gだ。でも、この誤差は現代科学では許容できない劣化と考えられ、新しい基準の作成が必要になった。2011年に白金製のキログラム原器が廃止になった。キログラムの新しい定義は、現代物理学の基本である相対性理論と量子力学に基づいている。ワット天秤の登場だ。試料の重さを、電流および電圧を用いて非常に精密に測定するための電気力学的重量測定装置だ。原理式はUI=mgvで表される。但し、Uは電位差、Iは電流、gは重力加速度、vはコイルを動かす速さ。従って、U, I, g,vを正確に測定することにより、m の正確な値を測定することが出来ることになる。因みに、電流および電位差の精密測定は、ジョセフソン効果と量子ホール効果に基づいて行われる。相対性理論と量子力学に基づいていると言われる所以だ。とうとう重さの定義までもが古典物理学の世界を卒業してしまった。目で見える世界が消えつつある。