ブレークスルーあれこれ

自分は開発・技術屋だったから「ブレークスルー」という言葉に憧れている。いや、憧れているというよりは若い頃の信条だった。男として生まれたからには、後世に残る技術的なブレークスルーを達成したいと願い努力してきた。結果として、世の中に役に立つほどに達成したものは無いが、今振り返ってもこの生き様は良かったと思っている。それほど「ブレークスルー」には拘ってきた。ところが、最近のブレークスルーの使い方は変だ。2回ワクチン接種を受けた人がコロナに感染することをブレークスルー感染というようだ。悪い意味で壁を通り抜けてしまったということだ。出来れば言い方を変えてほしいと思う。でも一方で、ブレークスルー賞なるものの存在を知った。米グーグルの創業者らが出資する科学賞だ。生命科学部門では、新型コロナウイルスワクチンに使われている新技術のメッセンジャーRNAワクチンの開発に貢献したドイツのバイオ企業ビオンテックの研究者らが選ばれた。数学部門では、望月京大教授が代数解析学の難問とされていた「柏原予想」を、解析学と幾何学の手法を組み合わせて証明したことが評価された。基礎物理学部門では、香取東大教授が極めて正確な「光格子時計」を開発したことが評価された。因みに、2013年にはiPS細胞の山中京大教授が選ばれている。賞金は3億3千万円だという。ブレークスルーの壁の高さといい、賞金の大きさといい、驚いた。