国際条約の不履行

中国政府が香港の統制を強化する「香港国家安全法」の制定に向けて動き出した。国家安全法とは、国家の分裂行為、反逆、暴動を禁止する法律のこと。香港の基本法には、政権転覆や国家分裂を禁じた条例はあるが、中身が曖昧なため香港政府が具体的な違反行為を決めることになっていたが、決められないまま現在に至っている。そこで中国が香港政府を無視し、全人代で香港の国家安全法を制定する方針を打ち出した。5月28日に可決され8月には施行されると報じられている。問題は香港政府無視と中身だ。国家分裂や政権転覆、組織的なテロ活動、外部勢力による内政干渉を禁止する。香港独立を主張したり共産党の一党支配を批判したりすれば違法となる。しかも外国人にも及ぶ。また中国の国家安全当局が香港に出先機関を設置できると定めている。要するに中国は「一国二制度」を形骸化させ、実力行使で「一国一制度」に変えようとしているのだ。これでは香港住民の言論の自由や諸外国からの経済活動が極端に制限されてしまうことになる。だから住民も諸外国も反対している。中国は内政干渉だと反発している。でも決して内政干渉では無く国際条約の不履行と言える。かつて香港は英国の植民地だったが1997年に返還された。中英共同宣言には、50年間は「一国二制度」を維持すると謳われている。当事者である英国は2047年まで香港の自由が維持されるよう、先頭に立って香港を救うべきだと思う。