猫の姿勢反転技

もうだいぶ昔の話だが、帰宅するとカミサンが今日は大変だったと報告する。自宅の前の公園の高い松の木に子猫が登って降りれなくなり、消防の梯子車が出動して救出したとのこと。一部始終を見守っていたようだ。確かその時自分は「猫は逆さまに落ちても足から着地出来るから大丈夫だったはずだよ」と答えたと記憶している。そんな記憶を思い出させたのが、秋山文野という翻訳家が書いた「猫が逆さに落ちても足から降りられる秘密を解明した300年の物理学史」という記事。物理学者グレッグ・ガバー博士の著書「Falling Felines and Fundamental Physics」を紹介している。300年にわたり、猫の立ち直り反射という猫の姿勢反転技を研究した歴史を追った本だ。17世紀の数学者は、水の中での物体の動きに関する論文を発表し落下する猫を「浮力を受ける球」に見立ててその動作を解明しようとしたが、間違っていた。19世紀の物理学者は、猫が落下中に重心を移動させて姿勢を反転させていると考察したが決定的な説明にはならなかった。やがて写真が発明され高速撮影で落下中の猫の姿勢が分かるようになった。そして20世紀になり生理学者が、上半身と下半身を別々にひねって慣性モーメントをコントロールしているという説を考案した。現在はこれが定説で、宇宙遊泳の姿勢制御にも応用されているという。300年も前の研究内容すらも理解出来ない自分が可笑しかった。