自分は誰?

医療技術が進化している。ES幹細胞やiPS細胞を使ってヒトの器官の小さな三次元モデルを生成する技術が花盛りだ。夢の再生医療だから、技術が進化することは人類にとって好ましいことではあるが、一方で倫理的な問題も含んでいる。ヒトの多能性幹細胞から作製する豆粒大の人工脳「脳オルガノイド」は、現代の神経科学で最も注目されている分野の一つだ。とうとう、その脳オルカノイドからヒトの未熟児と類似した脳波を検出したとカリフォルニア大学の研究チームが発表した。だが、脳オルガノイドに関する倫理規定はまだ存在していない。倫理よりも前に、脳オルカノイドの研究が一線を越えてしまったということだ。脳オルカノイドは今は試験管の中の世界だが、ヒトに適用される時代は目前だ。SF小説が現実になろうとしている。施術されると「自分は誰?自分は自分なのか?」と訳が分らないことになるかもしれない。早急な倫理ガイドラインの策定が必要だ。