5年後の処遇

外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管法が今日の未明に成立した。詳細が未定な大枠だけの法案だ。与党の強引な拙速さと、野党の反対のための反対で、中身についての議論は殆ど無かった。改正入管法は、日本が移民を受け入れることに舵を切った初めての法律という重要な位置づけにある。議論も無いのは与党も野党も無責任そのものと言える。この法案の骨子は、政府が指定した業種で一定の能力が認められる外国人労働者に対し、新たな在留資格「特定技能1号」「2号」を付与することが柱。問題は「特定技能1号」だ。滞在を5年間しか認めないことになっている。非熟練者は5年を過ぎたら帰国させるのが絶対条件だ。しかし、非熟練者は5年も経てば、仕事も言葉も覚え戦力になっているはず。帰してしまっては、企業はまたゼロから始めなければならない。非熟練者にとっても、5年後に帰国させられるのであれば、初めから日本などに来ない。この改正入管法には立派な前例がある。1960年代のドイツだ。でもドイツの法案は機能しなかった。結果として400万人の外人がドイツに残った。ドイツには「労働力を呼び寄せたが、来たのは人間だった」という言葉があるという。外人非熟練者は働く機械ではなく人間だ。人間として受け入れるのであれば、機械的に「5年で帰国」はあり得ない。もし「5年後の処遇」が議論されていれば、ドイツの轍を踏まずに済んだかもしれない。