修復されたピアノの演奏

受賞者を讃える恒例のノーベル平和賞コンサートが開かれた。主役は広島の原爆で傷つき修復されたピアノだ。約2万人の市民が聞き入ったとのこと。米歌手ジョン・レジェンドが鍵盤をたたいてビーチ・ボーイズの「神のみぞ知る」を熱唱。広島で胎内被爆したジャズピアニスト好井さんは、このピアノを使い国内で100回以上のコンサートを開いていた。このコンサートを直に見て相当感動したようだ。そう言えば、東日本大震災の時もそうだった。大津波により泥に埋もれてしまったピアノの修復が行われた。名取市の高校の修復されたピアノで、音楽家坂本龍一さんが創作した新譜を弾いた。新譜はasync。asyncとは「非同期」を意味するasynchronizationの略だという。災害の記憶を音に刻んだとのこと。ピアノの音は、物悲しくも透き通っている。でも時には激しくまくし立てる。受賞者のスピーチは、素晴らしいものが多いが、残念なことに通訳が入り直接的な感動は薄い。その点、ピアノは凄い。言葉の壁を越え、直接的に観衆を魅了させる力がある。きっと修復されたピアノの音は、被災者には観衆が感じる以上に前向きな希望を与えたに違いない。ただそれだけでも、修復されたピアノ演奏は大成功と言えると思う。