AB劇場の第三幕

舞台は森友学園から加計学園に移った。国家戦略特区を利用して加計学園が今治市に岡山理科大獣医学部を新設することが承認された。37億円の土地は今治市が無償提供。建設費192億円の半額96億円を今治市と愛媛県が負担する。加計は総理のポン友。至れり尽くせりだ。ところが「総理のご意向」なる文書が発覚。内閣府が文科省に無理矢理新設を迫った証拠と見られるが、政府はその存在を否定。だが前川前事務次官がその文書が存在すると明言。しかも「行政がゆがめられた」と発言した。内閣府は前川発言の否定に躍起だ。翌日読売新聞に前川の出会い系バー通いを暴露して、抹殺しようとした。だが前川は動じない。更なる隠し球を持っているようだ。話はこれから佳境に入りそうだ。ここで舞台を右席から見てみよう。安倍はポン友加計を優遇し獣医学部新設を指示。国家戦略特区はトップダウンだから、内閣府は加計学園の新設が承認されるように条件を設定。そして文科省を説き伏せた。ところが「総理のご意向」文書の存在が発覚。前川潰しのため読売に暴露記事掲載を指示。まるで悪代官に立ち向かうように、政府が悪人で、前川が善人の構図になっている。だが、舞台を左席から眺めると違う構図が見えてくる。国家戦略特区は岩盤規制を打ち破るために創設された。抵抗勢力は各省の官僚たち。獣医学部の新設は、農水省・文科省の官僚と利権政治家により阻止されている。規制改革を押し進める内閣府対岩盤規制死守の利権族との戦いだ。そう考えると内閣府側にも利があるように見える。だが、国家戦略特区とは、お試し特区。試して成功すれば横に広げていこうという案件が対象になる。でも、たとえ成功しても獣医学部が各地に広がるはずがない。従って、元々国家戦略特区に獣医学部を取り上げること自体が無理筋だったし、ポン友という落ちまで付いてしまった。結局AB劇場の第三幕は、原作も脚色も失敗していたということだろう。