思い入れのある赤坂離宮

迎賓館・赤坂離宮が、昨年4月から通年で一般公開されることになった。自分は40年以上前に四谷にある大学に入学した。それまで受験勉強ばかりの生活だったので、体育会系のクラブに入ろうと思っていた。でも、体育系はかなりハードだ。そこで、余りキツくなさそうな洋弓部に入部することにした。ところが、世の中そんなに甘くない。決してソフトではなかった。平日に週2回以上は赤坂離宮のある東宮御所3kmを1周し、土曜日は皇居5kmを1周するのがノルマだった。当時の離宮は毎日外側から眺めていたが、未だに中に入ったことはない。だから、赤坂離宮には殊の外思い入れがある。一般公開は、長年の夢見た塀の内側だ。ネットで赤坂離宮と和風別館のセットを申し込んだのが12月上旬。そして今日が念願の参観日。予定より1時間ほど早く四谷に着いた。久しぶりに母校内を散策した。当時の学生数は6千人程度だったが、今は倍以上いるらしい。建物も、当時と較べ5倍程度の収容力がありそうに見えた。すくすくと育っているようで、少し嬉しかった。赤坂離宮には西門から入場した。一言で言うと、ベルサイユ宮殿のミニチュア版。フランス人から見れば、チャチイなと感じるだろうが、我が国としては最上級品だ。他に類を見ないことは間違いない。装飾の金のケバケバしさが、背伸びする日本を感じさせた。だが、目を見張る一級品も存在していた。花鳥の間の七宝焼きだ。日本画家の渡辺省亭が描き、涛川惣助が焼いたものと説明していた。七宝焼きは技術的には難しい。絵付けの配色と焼き上がりは全く異なる。だが、花鳥の間の鳥たちは、まさに赤坂離宮の中で我が世の春とばかりに飛びかわっていた。これを見るだけでも、赤坂離宮に来た甲斐はあったと思う。(続く)