電通マンの行動規範

過労自殺した新入女子社員の労災が認定され、天下の電通に東京労働局が家宅捜査に踏み込んだ。労災の調査で1か月100時間を超える残業や休日出勤、上司からの叱責などに追い詰められた様子が明らかになっている。女子社員は東大卒だというから、本人の実務能力の欠如が原因ではないだろう。電通は昨年も一昨年も、東京労働局から長時間労働を止めるよう勧告を受けていた。それでも改善しないので労働基準法違反の疑いで刑事処分されることになった。電通側に否があることは明らかだ。電通には有名な鬼十則がある。電通マンの行動規範だ。「仕事は自分で創れ。受け身でやるな。大きな仕事に取り組め」など、何処の会社でも使いたいような規範が書いてある。だが中には「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは」という一文もある。まるで特攻隊精神だ。会社全体か管理者だけかは知らないが、鬼十則に心酔しているようだ。その企業文化が悲劇をもたらしたものと言えそうだ。書類送検を受け、社長が社員に「業務量の削減や評価の変革が必要だ」とメッセージを送ったが、受け取った社員は複雑な気持ちのようだ。「何を今更。立ち入り検査は当然。やっと解放されるのか」と言う人もいれば「今までの鬼十則と整合性がなさ過ぎる」と嘆く人もいるという。もし鬼十則の心酔度と残業時間の長さが一致していれば、このような悲劇は起こり難いはずだ。上司は残業もせずに、部下をこき使った結果かもしれない。いずれにしても電通がブラック企業であることは間違いなさそうだ。