比喩の達人

雑誌FACTAに寄稿した田勢康弘氏の記事が秀逸だ。「希代の手品師、安倍の馬脚」という題で、アベノミクスを扱き下ろしている。内容はアンチ・アベノミクス派が指摘しているものとそれ程変わらないが、比喩が的確で思わずニヤリとする。主なものをピックアップすると下記の通り。アベノミクスは幽霊みたいなもの。実体が無いから効果も無い。「良く見て下さい。鳩が出ますよ。ほら、出たでしょ」という鮮やかな手品師の目くらましと同じ。民主の鳩山、菅、野田という手品師の手際があまりにもお粗末だったので、観客は初めから「騙されたい」という心持でいる。安倍手品師の横には公明党の山口代表が囃し立てる。まるで海老一染之助・染太郎が「今日はいつもより沢山回しております」という囃子詞と同じ。安倍は「4年前の低迷した時代に後戻りさせてはなりません」と言うが、民主政権時代のGDP伸び率は5.7%で、安倍政権は2.4%。アベノミクスの効果は出ていない。株は少しは上がっているが官製相場。日銀が3.3兆円、GPIFが10兆円、ゆうちょが2兆円も注ぎ込んでいる。株価と内閣支持率が奇妙に連動しているので、株が上がるよう政権が操作している。3本の矢の異次元金融緩和は、糖尿病患者にインシュリンを打ち続けているようなもの。日本経済の体質改善には繋がっていない。新3本の矢は、出来の悪い学生が机の前の壁に「めざせ東大」と書いた紙を貼って眺めているだけで、遊び呆けている印象。政策目標などと言える代物ではないので「雨の日は傘をさしましょう」と言っているようなもの。アベノミクスには実体が無い。「賢い人でなければ見えない」という洋服を詐欺師に騙された王様に、家来も国民も「賢くない」と言われまいとして「すばらしい」と囃し立てる。あげくに王様はその「服」を着てパレードまで行う。群衆の中の1人の子供が指差して叫ぶ。「王様は裸だ」と締め括っている。田勢氏は比喩の達人だ。