マンション建て替えの要件

久し振りにマンション管理士の仕事を思い出した。国交省が老朽化したマンションや団地の建て替えを進めるため規制を緩和すると発表した。現在建て替えの合意が得られず老朽化しているものが多い。区分所有法では、建て替えには所有者の5分の4以上の同意が必要だが、このハードルが意外と高い。国交省の案は、建物が同じ敷地に2棟以上ある場合、福祉施設や公共施設も含めて再開発すれば3分の2以上に下げるというもの。街の再開発の手法を流用している。同じことをするのに、違う法律を使えば出来るという事自体陳腐な浅知恵だと思うのだが。現実問題として、マンションや団地の老朽化は激しく、建て替えニーズは極めて高い。だが現実には進まない。それには理由がある。残りの5分の1の住民が単に反対している為ではない。賛成したくても出来ないことに問題が有る。老朽化した住居の住民は年金暮らしの老人が多い。今更住居のために大金を叩く余裕はない。今まで築いてきたコミュニティも壊れてしまう。規制を単に緩めることは、弱者を切り捨てることに繋がる。反対するのは当たり前だ。従って、当局が老朽化解消を推し進めるには、同意率を下げることではない。5分の1の住民の不利益を解消することにあるはずだ。例えば、容積率を緩和し増床した部分の益を住民に還元するとか、転居に関する費用やその後の処遇を厚くしてあげるとか、方法は色々ある。お上は数字だけで判断する。下々の実態を見ていない。江戸時代と何も変わらない。再び明治維新をと思いたくなる。