ノーベル賞:国民の反応あれこれ

ノーベル賞受賞者を輩出したそれぞれの国の国民の反応が面白い。日本ではノーベル賞受賞イコール世界への貢献であり、かつ国民の誉れでもある。だから医学・生理学賞の大村智氏、物理学賞の梶田隆章氏が連日話題にのぼる。大村智氏は、本業の微生物による創薬だけでなく、教育者、美術愛好家更に温泉経営者として名を馳せたことが知れ渡り、今では美術館も温泉施設も長蛇の列の賑わいだという。梶田隆章氏も単身赴任生活を送りながら、奥様とは仲睦まじく、微笑ましさを感じさせている。両者とも先達の功績をたたえ、それが無かったら今の自分は無いと極めて謙虚だ。要するに、日本ではノーベル賞受賞者イコール人格温厚優秀かつ謙虚で、国民の一つの理想の姿なのだ。一方、中国では事情が一変するようだ。中国初のノーベル平和賞受賞者の劉暁波は、未だに監獄に閉じ込められている。そして今年は屠氏が3番目のノーベル賞として医学・生理学賞を中国で初めて受賞した。中国は共産党国家だから、思想的に受け付けない人を冷遇することを理解出来ない訳ではない。ところが、屠氏はノーベル医学・生理学賞であり、政治思想とは全く関係ない。だから中国国民がもろ手を挙げて祝福を交わすものだと思っていた。ところが違うようだ。皆の成果を独り占めしたと非難されている。屠氏の仕事は、毛沢東の文革時代の成果であり、当時は自分以外を否定する時代だった。そう考えると受賞は妥当に思えるが、時代の流れの中で考えると、他人の成果を横取りしたとも見える。真相は分からない。世界はいつも闇の中だ。だが科学的な真実は何時の世も変えようがない。自分が生きている間に真相が解明すると良いとは思うのだが。