ながら族

サルがスマホを見ながら温泉に浸かっている写真が新聞に載っていた。第一感はコンピューターグラフィックスによるパロディかと思った。昔のソニーウォークマンのCMを思い出したからだ。最近は歩きながら、自転車に乗りながら、車の運転をしながらスマホをしている人が多い。電車に乗るとお経を読むかのような格好で殆んどの人がスマホを見ている。まるで新興宗教の一団に出くわしたかのような不思議な気持ちになる。どう見ても異常だ。だからパロディかと思ったのだ。ところがパロディではなく実写らしい。地獄谷野猿公苑で温泉に浸かっているサルを撮ろうとして、サルに近づいた人がサルにスマホを奪われたところを撮ったのがこの写真。撮影者はロンドンの「今年の野生生物写真家」コンテストで人気投票により特別賞に選ばれ、世界中に配信されたようだ。投票した人たちは、何を基準に票を入れたのだろうか。温泉に浸かるサルなのか、スマホを操作するサルなのか、それともサルの惑星の存在を実感したからなのか。自分が投票するのであれば、その理由は温泉に浸かりながらスマホを見る行為そのもの。警鐘という名の一票を投じたに違いない。