皆既月食とノーベル賞

今宵の月は皆既月食だ。煌々とした満月が欠け出しほの暗い赤い月に変わった。大昔の人たちは不吉の始まりと感じたに違いない。しかし現代では、月食は地球を映し出すスクリーンであることを知っている。地球在っての月であることを。そんな関係を思い起こさせたのが、今年のノーベル物理学賞受賞のLEDだ。そもそもLEDが白熱電球に置き換わることを目指して、初めて赤色のLEDを開発したのは元米GEのニック・ホロニアック・イリノイ大名誉教授だ。その後西澤潤一東北大名誉教授が緑色のLEDの開発に成功した。そしてそれから数十年が過ぎて青色のLEDが開発された。ノーベル財団は、LEDはエジソンの白熱電球以来の画期的大発明だと言っている。ノーベル賞の趣旨からすれば、本来はホロニアック教授と西澤教授と赤崎教授が受賞すべきものだと思う。天野教授と中村教授は、長年誰しも成功しなかった実用化に結びつけたことが功績であり、ノーベル賞というよりは経済面での賞に値するものだと思う。皆既月食を眺めていて、ホロニアック教授と西澤教授と赤崎教授が地球で、天野教授と中村教授は月、という関係なのだろうという気がした。地球は地球上から見られないが、月はいつも見ることが出来る。殊の外満月は華やかだ。