硫黄のような臭い

御嶽山上空からヘリで噴火の様子を取材したリポーターが「硫黄のような臭いが立ち込めている」と伝えたところ、すかさず某東大教授が「硫黄は無臭だ」と突っ込みを入れたとのこと。某教授曰く「硫黄は無臭で、硫黄臭いとは硫化水素のこと。硫黄臭いという表現は慣用句として定着しているが、学術的には誤り。マスコミは正しく伝えるべきだ」と。だが自分は化学に40年近く携わってきたが、硫黄臭いのは硫黄の臭いだと思っていた。調べてみると、硫黄は無臭だが空気中ですぐ反応して表面は硫化水素になるので、硫黄は臭いがあると誤解される、とある。化学者が「硫黄のような臭い」と言えば間違いになるのだろうが、一般の人が「硫黄のような臭い」と言うのも間違いなのだろうか。化学者は硫黄と硫化水素とは別物として区別するが、一般の人は区別などしない。箱根の大涌谷にある黄色い塊が硫黄であることを知っており、その塊が発する臭いを硫黄の臭いと言っている。実用的には硫黄は硫黄臭いのが正しいことになる。だから慣用句としての「硫黄のような臭い」は正しいともいえる。世界の誰しもが学術的に正しく言うことだけが良いとは限らない。アバウトで通じればそれに越したことはないと思うのだが。