それなりの顔と卑しい顔

出世の階段を上ると、普通はそれなりの顔になる。ところが中にはそれとは逆に卑しい顔になる人もいる。猪瀬都知事がそのようだ。信州大の全共闘議長としてのバリケード封鎖を皮切りに世の中にデビューし、転身した後「なぜ」シリーズで作家の地位を確立した。その後行革断行評議会の委員になり、道路公団の民営化に一つの役割を果たしたことは記憶に新しい。その働きが買われたのかどうは不明だが、石原が猪瀬を副知事に迎え更に後継者に指名した。委員と副知事時代はそれなりの顔に見えた。ところが知事選で日本の選挙史上個人最多得票記録の433万票を獲得し当選を果たした頃から顔が変わってきた。最多得票の自信が、恩になった石原への横柄さを生み鼻持ちならない奴に変貌させた。投票日の1か月前に恩着せがましく虎雄を訪ね選挙の協力依頼に行った。お金の話は一切していないと言っているが、まさか1票を頼みに行った訳ではあるまい。1億円の要求に対し5千万円の現金が議員会館で渡され、借用書を書いたと言うが徳田は存在を否定している。この金は選挙運動費用収支報告書には記載されておらず妻名義で銀行に眠っていた。今年9月東京地検特捜部が徳田の強制捜査に入った後、慌てて返却したという。記者の囲み取材では「選挙に使う積りだった」と明言したが、その直後の会見では「選挙とは関係ない個人的な借入」と言い訳。挙げ句の果ては、徳田が勝手に渡してきたと言う。状況証拠は限りなくクロに近いが、本人は否定している。卑しさが顔だけでなく身体から発散し始めている。そう言えば五輪のプレゼンで「お金なら銀行に沢山有ります」と世界の人から顰蹙を買っていたが、思わず徳田の事を思い出して口が滑ったのかもしれないとも勘ぐれる。事情は色々あるだろうが、許せないのは「恩を仇で返す」ことだ。太宰でなくても「人間失格」は間違いなし。