舞台の神様が舞い降りる時

急遽代役を引き受けた宮沢りえが、舞台の神様が舞い降りたとしか思えないほどの役を演じ、大絶賛を浴びたとのこと。舞台は、作・演出三谷幸喜、主演野田秀樹と天海祐希の「おのれナポレオン」での天海の代役。天海が心筋梗塞で降板し、宮沢が急遽代役を引き受けた。この舞台は4月6日から5月12日までで、すでに9割方終わっている時に天海が倒れた。残り数日であるし、天海の役は台詞が130もありダンスもありで即代役は不可能に近い。関係者の常識では打ち切るのが妥当らしい。ところが、野田は宮沢に代役を依頼し、宮沢は代役を快諾したとのこと。野田は何故宮沢に非常に困難な代役を頼んだのだろうか、そして宮沢は何故たった数日間しかない代役を二つ返事で受けたのだろうか。多分、本来は演出家である野田は、今までの経験で宮沢の才能を見抜いていたのだろう。一方宮沢は演出家としての野田に対し数年前の「ハイパー」で大きな恩義がある。失敗すれば女優家業が危うくなることも十分承知の上での決断だと思う。このような状況下で常識人であれば、依頼もしないし受諾もしない。それが普通だ。しかし、この二人は依頼して受諾した。まさに、これこそがトップレベルのプロ根性というものなのだろう。兎にも角にも、目出度く千秋楽を迎えることを願いたい。