ハレー彗星の思い出

今月16日午前4時半頃、直径45m、推定重量13万トンの小惑星が、地球表面から2万8千キロの地点を通過する。月までの距離の約13分の1しかない近距離であり、これほどの大きい天体が大接近するのは観測史上初めてとのこと。このニュースで子供の頃の出来事を思い出した。地球に星が接近して短時間空気がなくなるので、自転車のチューブに空気を溜め込む必要があると言われ、チューブを探した経験だ。調べてみたが昭和20年代に星が接近して騒いだ出来事はない。しかし自分がチューブを探したことは覚えている。調べていくうちに、明治43年にハレー彗星が地球に接近したことがあることが分かった。当時ハレー彗星の尾の中に地球が入ると5分ほど空気が無くなるというデマが流れた。一部の無知な人はチューブを掻き集めたらしい。そこで昔の記憶がはっきりと蘇ってきた。当時の自分は小学校に上がる前で5、6歳。近所には駄菓子屋などなく、毎週「だっちゃん坊や」という紙芝居屋のおじさんが来るのが楽しみだった。その紙芝居で見たのがハレー彗星対策のチューブ。子供心にこれは大変だと思いチューブを探したり、ほかの方法はないか考えたりした。子供は夢や物語と現実がごちゃ混ぜになる。というか夢や物語の中でも生きている。子供の頃の記憶は曖昧だ。しかしその曖昧な記憶が経験に変わり人格が形成されていく。ということは子供は環境に育てられるとも言える。どういう訳か、小惑星が孟母三遷に辿り着いた。