泣くということ

今から60年近く前に、明治生まれで厳格な父が涙を流したことを見たことがある。時代劇のチャンバラが放映されている映画館での出来事だ。ふと横を見ると父が涙を流している。子供ながらに、どうして泣くのと聞いてみた。父は「人が切られて死んで逝くからさ」と答えた。しかし当時の自分には、父の本当の気持ちを理解することは出来なかった。今から思うと戦争を体験した父は、理由はともあれ人が死ぬということに無情を感じていたに違いない。その結果の涙であったと思う。昔の人は苦労した。その反面、現代の人は自分を含めお気楽だ。今日テレビで日体大が得意とする「団体行動」の放映があった。小学生が器用に一糸乱れず団体行動を演技する。勿論、小学生の皆々は目が輝いている。その目の輝きに感動し、思わず目頭が熱くなりティッシュを探すはめになった。このように泣くということは、時代で変わる。人が死ぬことで涙する時代から、子供が一生懸命に頑張ることに涙する時代へと変わりつつある。何故だか分からないが、生きていて良かったと思う出来事であった。