09日 5月 2025
日本発の先端技術材料であるカーボンナノチューブが、昨年EUで発がん性に近い物質と認定され、事実上禁止処分となった。規制案のベースとなった論文は、14年に発売を中止した毒性が強いカーボンナノチューブの実験データを採用していた。日本の関係者は、科学的根拠に欠けた規制だったので、すぐに撤回されると考えたことが甘かった結果となった。カーボンナノチューブとは、鋼の20倍の強度を持ち、銅の10倍の高熱伝導性を有し、シリコンの10倍の電子移動度を持ち、重さはアルミの半分で、バッテリー、半導体、複合材料など、様々な分野で利用が期待されている。カーボンナノチューブの生みの親である飯島名城大教授は「科学というよりは感情論。悪者というレッテルを貼られてしまった」と嘆いている。しかし、6年前からEUがカーボンナノチューブの規制を準備しているという話はあったのだ。でも、日本の誰も欧州でのロビイングに動こうとしなかったのだ。もし、真面目にロビイングをしていれば、このような事態に陥る事は無かったかもしれない。スポーツ界でも、日本が秀でるとルールが変更されるのは常だ。正論で迫るロビイングは絶対必要だ。
08日 5月 2025
兵庫県知事選を契機に、新聞社がファクトチェックする動きが出てきた。ファクトチェック後進国である日本の夜明けかもしれない。神戸新聞が「整備に1兆円かかる播磨臨海地域道路のルートを変更して5000億円に圧縮した斎藤知事に対して、既得権益を持つ議員たちが斎藤おろしを画策した」とする陰謀論に関するファクトチェック記事を載せた。斎藤知事が1兆円から5000億円になるようにルート変更したというのは誤り。反対派は5000億円のルートを1兆円に変更しようとしているのは根拠不明。亡くなった竹内英明前県議に寄付した不動産業者が利権に関わったというのは誤り、という具合。これが出来ていたら、選挙結果は変わっていたに違いない。河北新報では、ファクトチェック形式ではなく、真偽不明な情報について記者が調査し読者に根拠を提示する形を取っている。今まで新聞社がSNSのファクトチェックをしなかったのは、公平性を考えたからだと言う。と言うよりは、新聞社はSNSに踏み込まないという壁が存在していたからだろう。やっと、新聞とSNSの垣根が取り除かれそうだ。YouTubeも巻き込み、情報機関の融合化が公正な情報伝達手段となるよう期待したい。
07日 5月 2025
国が政策案について一般から意見を募るパブリックコメントという制度がある。建前は、国の行政運営の公正さや透明性の向上を図るため、政策案などを公表して広く一般から意見を募り、政策決定に活用するのが目的ということになっている。昨年度は1万件以上の意見が寄せられたものが10案件あったとのこと。ところが、文言・文章が同一の意見が大量にあったという。いわばコピペ投書だ。X(旧ツイッター)で例文を示し、大量に意見を出すよう呼びかけるSNSが拡散された結果だ。制度を所管する総務省によると、パブリックコメントの意見は内容が考慮され、多寡は判断材料とならないとのこと。同一意見の大量投書は、行政事務の適正な執行の妨げになる。確かに、総務省の言い分には一理ある。SNSで投書を呼び掛けることは良いが、例文を示し大量の投書をさせることはやり過ぎだ。一方で、国はパブリックコメントを目的に添って有効に使っているのだろうか?今まで見てきた経験から言うと、殆どがアリバイ作りに使われている。結局、どっちもどっちと言えそうだ。
06日 5月 2025
ゴールデンウイークに入り、我が家に孫が遊びに来た。去年までは親と一緒に来るのが通例だった。だが、今年は初めて孫だけでやって来た。長男の次女(中2)と三男の長男(中1)の二人が、連絡を取り合い協力しながら我が家に辿り着いた。成長したものだと感心した。2泊して帰った時、親への第一声が「楽しかったよ」とのことで、本当に楽しかったのだろう。我が家では、孫達は自分とカミサンを「じいじ、ばあば」と呼ぶ。「おじいちゃん」も嫌だし「じじい」はもっての外。「じいじ」が心地良い。そんな折、AERAの「じいじ、ばあばに虫酸が走る? 祖父母をどう呼ぶか問題」という記事が目に留まった。呼び方には地方差があるようで、首都圏ではほぼ半数が「じいじ、ばあば」と呼んでいるという。「おじいちゃん おばあちゃん」は自分の祖父母に対して使う以外に、他人であっても上の年代に対して使うことがある言葉だ。それに対して、「パパ ママ」は自分の家庭内でしか使えない言葉で、「じいじ ばあば」は「パパ ママ」の延長線上にあるものという。「じいじ ばあば」という言葉の背後には「年寄りくさくありたくない」という意識があるらしい。但し、地方では地域に根差してある種の「年代的な役割」が強く規定された社会の中で生きてきた人にとっては、虫酸が走る呼び方らしい。
05日 5月 2025
政府が備蓄米を放出したものの、コメ価格は17週連続で値上がりしている。殆どの備蓄米はJAが落札し、大手コンビニや大手外食企業に販売され、中小のスーパーや米穀小売店にはまわって来ない。JAは、金利は農林中金、運送は全農物流、発注はアグリネットサービス、卸売りは全農パールライス、小売りはAコープとしてJAグループの企業を活用し利益を得ている。農水省は、1俵1万3千円で買い入れた備蓄米を2万千円で売却し、280億円の巨利を得ている。高騰を防ぐのが目的だったとしたら、買い入れ価格近くで売却すべきだった。何故、JAが独占し、農水省は高価格で売却したのだろうか。答えは明瞭だ。JAと農水省と農水族政治家がグルになって、コメ価格の高騰を維持しようとしているからだ。備蓄米の放出も農水省が率先した訳ではない。石破首相が言うことを聞かない農水省に備蓄米放出を命令した結果だという。結局、農水族政治家を放逐しない限り、コメ価格が下がる見通しは無さそうだ。
04日 5月 2025
かつて世界1位だった日本の漁獲生産量(漁業と養殖)は、11位と転落している。今や伸び続ける韓国にも抜かれる寸前だ。日本のEEZは447万平方kmと世界第6位の広さを誇るが、一方韓国はわずか48万平方kmで日本の10分の1に過ぎないというのに。日本政府は漁獲生産量の減少を海水温上昇や中国の乱獲としているが、果たして本当なのだろうか?日本と韓国にとって、海水温上昇も中国の乱獲も同じ条件だ。政府の説明では納得出来ない。韓国の漁獲生産量が伸びている理由は養殖にある。日本は100万tで推移しているが、韓国は100万tから250万tに伸びているのだ。養殖の伸びは世界的に顕著だ。漁業は伸びていないが、今や21,000万tの半分以上は養殖なのだ。日本の養殖は完全に出遅れている。世界を見ない島国日本の農水省の時代遅れの見識が足を引っ張っていると言えそうだ。
03日 5月 2025
ナイ・ハーバード大名誉教授は1990年代にソフトパワー理論を提唱した。映画や音楽などの文化や価値観、対外援助などには、軍事力などのハードパワーにも劣らない影響力があると説いた。パワーとは、他者を自分の望むように動かす能力のことだ。3つの種類がある。威嚇による強制、金銭的な報酬、そしてソフトパワーだ。ソフトパワーとは、他者を魅了することによって自分と同じように動かす力のことを指す。ソフトパワーを構成するのは、その国が持つ文化、国内社会の状況、そして政治政策や外交方針の3つだ。米国では伝統的に文化や政治、外交などの場面で、市民社会が大きな役割を果たしてきた。パワーの源泉は政府ではなく、大学や財団、非営利団体などにある。米国第一を掲げるトランプ政権の下で、米国のソフトパワーが低下している。米国への信頼が低下しているのだ。最近、トランプの横暴さに喝采する米国民と、一方反対もしないで横暴さを許している米国民にも失望している。とても信頼出来る国民とは思えなくなってきた。むしろ軽蔑しているとも言える。
02日 5月 2025
物価高対策として、消費税減税が焦点になっている。選挙が差し迫っている自民の参院は8割が減税を要望している。公明は減税とつなぎ給付。立民は1年間食料品0%。維新は2年間食料品0%。国民は時限的に消費税一律5%だ。消費税減税の財源については、立民は赤字国債に頼らない確保策、維新は税収増加分を充てる、国民は赤字国債の発行と、各党バラバラだ。消費税は社会保険料に充てるという約束になっているから、消費税減税を訴えるには、財源確保の手段が問われている。ガソリン暫定税も同じ構図にある。ガソリン暫定税と地方交付金はリンクしている。だから、国民がガソリン暫定税廃止を訴えても地方自治体が反対している。でも、これは財務省による罠だと思う。消費税と社会保険料、ガソリン暫定税と地方交付金は、法律が出来た時は名目上リンクさせていたが、実態は別物だ。歳入と歳出をオーバーオールで考えるのが財務省の仕事だ。そこに、リンクを守る掟は無い。消費税減税もガソリン暫定税廃止も、施行後に財務省の歳出配分を問えば済むことだけだと思うのだが。
01日 5月 2025
今年の春闘は賃上げ率が昨年よりも高く5.37%となった。また、労働組合の要求以上の回答を出す企業や初任給「50万円」を打ち出す企業も出てきている。内部留保を積み上げるより、給与を上げ消費に向かわせる方が経済にとって良いに決まっている。漸く企業も目が覚めたのだろう。しかし、初任給をいきなり50万円に上げて、他への影響は無いのだろうかと心配になる。入社2~3年の社員の給与とバランスはとれているのだろうか?もし初任給の方が高く逆転していれば、先輩のモラールはダダ下がりになるに違いない。企業にとって、新人の確保は出来たもののトータルでの士気が下がってしまったのでは本末転倒だ。更に、初任給50万円の新人の来年の昇給はどうなるのだろうか?恐らく殆ど昇給が無いに違いない。これも士気が下がる要因になる。今でも大卒新入社員は入社3年のうちにおよそ35%が辞めると言われている。初任給50万円が、企業全体の士気低下に繋がらなければ良いのだが。余計な心配をしてしまう。
30日 4月 2025
トランプが米大統領に返り咲いてから100日が経った。矢継ぎ早に大統領令を発令し、米国ばかりか世界中を混乱させている。その横暴ぶりは保守系シンクタンクの政策提案書「プロジェクト2025」の筋書き通りだと米誌は指摘している。「プロジェクト2025」とは、右派系シンクタンクのヘリテージ財団がトランプのために作成した政策提案集だ。提言する政策の4つの柱は、(1)アメリカの生活の中核として、家族の重要性を復権させる、(2)行政国家を解体する、(3)国家主権と国境を防衛する、(4)神によって授けられた個人が自由に生きる権利を確保する、というもの。一言で言うと、どうやって大統領権限を拡大し、数世紀前の良きアメリカ的な社会観に戻すかという提案だ。現在ほぼ提案通り進んでいる。今後トランプがどのように動くかは、プロジェクト2025を読めば推測出来るという。但し、関税については賛否両論が記載されている。トランプは関税を選んだので、この先は読めない。プロジェクト2025の作成者は、余りにも忠実に実行してくれているので、ビックリして喜んでいるという。でも、数世紀前のアメリカに戻すことは出来ないだろうし、戻したところで米国民が幸せになるとは全く思えない。