企業の買収には、帳簿には現れない価値がある。いわゆる「のれん」というやつだ。たとえば、純資産が6000億円の会社を1兆円で買収すれば、差額の4000億円がのれんとなる。日本では、のれんを一定期間で定額償却することが求められてきた。折角、将来の利益を見込んで買収したのに、即償却が始まり、当面の利益を圧迫することになる。これが、なかなか買収に踏み切れない理由だ。のれんをめぐる国際的な会計ルールは、2つある。1つは、日本式の定額償却する方法。もう1つは、価値が明確に減少したときにのみ減損処理を行えばよいとする国際会計基準の方法だ。これが欧米で主流となっている。償却にしても減損にしても一長一短がある。世界は償却を捨てて減損を採った。日本の主張は退けられたのだ。トヨタ自動車、日立製作所、ソニーグループなど、グローバルに展開する企業のほとんどが国際会計基準に移行した。今や、償却に逡巡する企業は、脱皮の出来ない古い体質の石頭と言えそうだ。
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