国立大の学費150万円の是非

中央教育審議会での伊藤公平慶応義塾長の提言「国立大の学費を年150万円に上げるべきだ」が議論を呼んでいる。現在の国立大の学費の標準額は年53万5800円。実質的な学費は年300万円かかるので、2040年には3倍にすべきという提案だ。同時に返済不要の給付型奨学金を充実させることも提案している。提言の目的は、大学教育の質を上げること、私大との学費格差を抑えること、地方大学の空洞化を避けること、だと言う。この提案は概ね妥当だと思う。そもそも受験勉強に金がかかり過ぎている。東大合格者の殆どが裕福な家庭で育っているのも肯ける。学費を上げて、同時に給付型奨学金を充実させれば、家庭格差もある程度解消されることになる。でも、伊藤塾長の提案は次善の策だと思う。日本の大学教育における最大の問題は、国が大学教育に力を入れていないことだ。いや、むしろ、法人化などで足を引っ張っていることだ。中央教育審議会は文科省内の内輪の議論で済ましてはいけない。国としての教育の在り方を議論し、国の方針を正していく立場にある。中央教育審議会が言わずして、教育の質が向上するはずがない。