トリチウムの分離技術開発を

福島原発ALPS処理水の放出が始まって5ヶ月が過ぎた。原発敷地内に溜まっている処理水は130万tで、1日当たり90tが増え続けている。放出量は1日当たりmax500tを目指している。上手く行っても完了までに30~40年はかかる。トリチウムを含む処理水を放出する理由は、トリチウムを含む水は普通の水と化学的性質が同じため、分離技術が存在しないからだと言われている。ところが、全く刃が立たない訳ではなく、技術の芽は存在しているようだ。2018年に近畿大学の研究チームが、直径5ナノメートルの超微細な穴を持つアルミ製フィルターにトリチウム水を含んだ水蒸気を通すと、穴の表面にトリチウム水だけが残り、分離して取り除くことに成功したと発表した。しかし、処理量を増やすと効率が極端に落ちてしまった。1時間で数グラムしか分離できない技術だったのだ。そこで研究者らは、トリチウムが超微細な穴に吸着することに注目し、アルミの替わりに多孔質体を用いて効率を上げる研究に着手した。文科省所管の国立研究開発法人科学技術振興機構の「A-STEP」という産学共同研究の支援プログラムに応募したが、不採用。理由は稼げる研究ではないから。結局開発は2022年度をもって休止してしまった。ALPS処理水の放出が決まったからといって、国はトリチウム除去研究をしなくて良いという訳ではない。国が本腰を入れて取り組むべき研究だと思う。