たかが楊枝されど楊枝

最も安い爪楊枝は550本入りで259円だから、1本当たり50銭だ。国産の白樺でも、1本当たりは約1円と安い。その爪楊枝に歴史的変革が起きているという。現在出回っている上部に溝のある楊枝は「こけし」と呼ばれている。白樺楊枝は、製造中のささくれを除去するために焦がすのだが、その結果、頭の部分が黒くなってしまう。それが汚れに見えないようにと、爪楊枝業者が話し合い、こけし人形の黒い頭に見立てて、溝をつけてみることになった。だから、爪楊枝の上部には溝があるのだ。しかし、その溝が曲者だった。作る側は、検品に手間が掛かる、不良率が高くなる、加工機械のメンテナンスが大変等々の問題を抱えている。一方使用する側は形が不揃いだとクレームをつける。そこで、菊水産業は思い切って、溝無しの楊枝にしてみたとのこと。意外とこれがスタイリッシュだと好評とのこと。それでは全量溝を無くすかというと、そうではない。菊水産業は、溝は地場産業の歴史で、昔の人が考えて生み出した技術だから残していかないといけないなと思っているという。溝を残すために、一部商品の溝を無くす。厳しい状況が続く地場産業を守るための決断だったと言える。これからは、楊枝を使う度に溝の有無を確認しようと思う。たかが楊枝されど楊枝ということか。